新版 荒れ野の40年

リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー
新版 荒れ野の40年
ヴァイツゼッカー大統領ドイツ終戦40周年記念演説(岩波ブックレット 767)
岩波書店、2009年、63頁。

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ヴァイツゼッカー大統領演説全文——1985年5月8日
解説——若い君への手紙 (永井清彦)

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 今回読んでみて印象に残ったところを。ユダヤの格言や旧約からの引用以外に、
「かつて敵側だった人びとが和睦しようという気になるには、どれほど自分に打ち克たねばならなかった——このことを忘れて5月8日を思い浮かべることは許されません。ワルシャワのゲットーで、そしてチェコのリディツェ村で虐殺された犠牲者たち——われわれは本当にその親族の気持になれるものでしょうか」(17頁)
「5月8日のあとの運命に押し流され、以来何十年とその地に住みついている人びと、この人びとに政治に煩わされることのない持続的な将来の安全を約束すること——これが「武力不行使」の今日の意味であります。法律上の主張で争うよりと、理解し合わねばならぬという戒めを優先させねばなりません」(19頁)

 この演説が1985年のものである意義は、テレオロジカルな評価は排除しつつもちゃんと見定めなくてはならない。