バウンド

ラリー・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー 監督
バウンド
1996年

Larry Wachowski and Andy Wachowski
Bound
1996

(以下、ネタバレ有)

***

Gina Gershon as Corky
Jennifer Tilly as Violet
Joe Pantoliano as Caesar
Barry Kivel as Shelly
Christopher Meloni as Johnnie Marzzone
Richard C. Sarafian as Gino Marzzone
John Ryan as Mickey Malnato

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 WOWOWで放送されていた『バウンド』を観た。後に『マトリックス』シリーズなどを手掛けたウォシャウスキ兄弟(現LanaとLily姉妹)の初監督作品とのこと。確かに『マトリックス』の大ヒットは記憶しているのだが実は見たことがない私。『クラウド・アトラス』は楽しみましたし『センス8』も勧められて少しばかり観たという程度。

 盗人でムショを出たばかり(このあたりが終わってから観始めたので、「ということらしい」だけど)のレズビアンのコーキーは、ヴァイオレットという女性に誘惑され関係を築き始める。ヴァイオレットはマフィア一家に近しく、その一員のシーザーと同棲しているが離れたがっていた。このマフィアはあるとき金のためにひどく手を汚すのだが、ヴァイオレットとコーキーはシーザーとボスであるジョニーの息子ジーノとの不和を利用してその金を奪い自立することを計画する。二人は互いを裏切らないと言葉を交わし、ついに実行に移す。金がなくなったことに気づいたシーザーは二人の計画をなぞるようにボスとジーノを殺してしまいヴァイオレットを連れて逃亡しようとするのだが、途中で二人の電話を目撃し嵌められたことに気づいた。金を取り返そうとするシーザーに二人はもはや崖っぷちというところまで追い詰められるのだが、コーキーの踏ん張りと、ヴァイオレットの機転と勇気に満ちた行動によってこの賭け事に勝利する。エピローグ、ヴァイオレットはマフィアのミッキーに闇稼業を離れて生きていくことを告げ、二人はともに歩んでいく。

 番組情報に「計画するのだが……?」とあったので易々とハッピーエンドには終わるまいと観ていたのだが、計画が動き出してからは息つく暇がないほどハラハラする展開で、観終わった後は緊張が解けたのか体にドッと疲労が来た。グロいシーンが多く、拳銃で殺したり殴り倒すくらいならまだ見ていられるのだが、苦手な人はやめておいたほうがよい。マフィアが金の在処を吐かせるために「体に訊く」方法が大変キツく、10回尋ねる、一回ごとに指(爪ではない)を……なので。ヴァイオレットにもこの拷問は聞こえており、コーキーを拠り所としてさらに求めるきっかけとなった。また、終盤でシーザーが二人を追い詰める際にも同じ方法で虐げようとする。

 どうもこの体に訊く・応えるというのはこの映画のポイントの一つであるように思う。二人のセックスシーンでは、触ればわかるとヴァイオレットが言うように体で互いへの思いが伝えられる。一方で、言葉ではなかなか相手を信じ切るところまで行くことができない、とか。同時に、虚構であるはずのこの作品は体という物理的実体を通して真正性を獲得し、映画というメディア自体を問い直しているような、そんな感じがした。